
3月のある週末、ガソリンスタンドの看板を見て目を疑った方は多かったはずです。
レギュラー190円台。
つい数週間前まで160円台だったのに。
いったい何が起きたのでしょうか?
1月(平時):154円/L → 3月16日(ピーク):190円/L
すべての始まりは、幅3キロの水路だった
ペルシャ湾の出口に、ホルムズ海峡という場所があります。最も狭いところで約33キロ。
ただ、タンカーが実際に使う航路は片側わずか3キロ程度です。三方をイランの領土に囲まれた、細長い海の回廊。
日本が輸入する原油の約9割が、この水路を通っています。代わりのルートはありません。
中東の油田 → ホルムズ海峡(ここが止まった)→ インド洋 → 日本の製油所 → ガソリンスタンド
何が起きたのか、時系列で整理する
①2026年2月28日
米国・イスラエルがイランへの攻撃を開始。原油市場が即座に反応した。
②3月1日〜
ホルムズ海峡の通航が事実上ストップ。日本の邦船大手3社(商船三井・日本郵船・川崎汽船)が通航を全面停止。
ペルシャ湾内に日本関係船44隻が足止めに。
③3月16日
ガソリン全国平均が190.8円に。過去最高値を更新。
④3月19日
政府が緊急補助金を再開(48.1円/L、過去最高額)。価格が徐々に下がり始める。
⑤4月8日
米イラン停戦が一時発効。しかし海峡を通過した船はわずか1日7隻。実態はほぼ変わらず。
⑥4月13日
和平交渉が決裂。米国が「逆封鎖」を宣言し、封鎖をさらに強化。
⑦4月17日(現在)
ガソリン全国平均167.5円。補助金が効いている。ただし海峡は依然封鎖中。
「167円なら安心」は、半分しか正しくない
補助金がなければ、今も190円台のままです。
4月13日時点の全国平均は167.5円。政府が1リットルあたり48.1円を補助しているからこそ実現している数字で、上乗せ前の実力は215円超という計算になります。
海峡封鎖という根本原因は、何も解決していません。
補助金の財源は約1兆800億円。原油高が長引けば、この財源にも限界が出てきます。
停戦後も機雷の掃海・海上保険の回復・滞留船舶の処理など複数の問題が残り、海峡が完全に正常化するまで数カ月はかかる見込みです。
ガソリンだけではない。物価全体への波及
燃料費が上がると、その影響はスーパーの棚にまで広がります。
原油高 → ガソリン・軽油高 → トラック輸送コスト上昇 → 食品・日用品の値上げ
2026年4月だけで約2,278品目が値上げの予定です。ガソリン補助金で燃料価格は抑えられていても、輸送コスト上昇の影響はすでに食品・飲料・日用品の価格に忍び込んでいます。
電気代・ガス代も同じ方向に動いています。
私たちに今できること
「価格が下がった=危機は終わった」と思いたくなるのは自然です。でも今回は違います。
補助金という「かさ」が雨を防いでいるだけで、雨そのものはまだ降り続けています。
日々の給油をセルフスタンドや価格比較アプリで少し工夫する、買い置きできる日用品を早めに確保する——小さな積み重ねが、じわじわ続く物価高を乗り切る力になります。
そして何より大切なのは、「なぜ上がったのか」を知ることです。
遠い海峡の動きが、家計の数字に直結している。そのつながりを知っていれば、次に看板の価格が動いたとき、慌てずに判断できます。
本コラムは公開情報をもとに作成しています。最新のガソリン価格は資源エネルギー庁の公式サイトでご確認ください。(石﨑)
