ガソリン200円超え目前――ホルムズ封鎖が家計を直撃する

 

まず「何が起きているか」を3行で

2026年2月28日、アメリカとイスラエルがイランへの大規模軍事攻撃を開始し、最高指導者ハメネイ師が死亡した。

イランはただちに報復に転じ、中東の”海の要衝”ホルムズ海峡が事実上封鎖された。

これは日本のエネルギーと経済に直接打撃を与える、極めて深刻な事態だ。

 

 

ホルムズ海峡ってどこ?なぜそんなに大事なの?

ホルムズ海峡は、イランとアラブ首長国連邦(UAE)の間にある細長い海峡で、幅は最も狭いところでわずか約30キロ。

ここがなぜ世界経済の”急所”なのかというと――

世界が1日に消費する原油の約2割がこの海峡を通過している。

さらに日本が日々消費する原油とLNGの約80%がホルムズ海峡を経由している。

つまりここが止まると、日本に入るエネルギーの大部分がストップする、というわけだ。

 

今、海峡で何が起きているか

 

紛争前は1日平均24隻だった原油タンカーの通過は、3月1日にはわずか4隻まで激減し、以降ほぼゼロが続いている。

LPGタンカーは94%減。海峡周辺には300隻の石油タンカーと、コンテナ船140〜150隻(47万TEU相当)が湾内で身動きが取れないまま滞留している。

封鎖のカラクリは実は「戦争保険」にある。海峡を物理的に塞いだわけではなく、保険会社が戦争リスク保険を撤回したことで、船主が経済的にリスクを取れなくなり通行が止まった。

「脅威の認識に基づく事実上の封鎖」と海運保険の専門家は指摘している。

AP・モラー・マースク、ハパックロイド、CMA CGM、MSCの世界大手4社もすべてホルムズ通過を停止。

さらにフーシ派が紅海での攻撃を再開しているためスエズ運河ルートも使えず、残る選択肢はアフリカ南端の喜望峰を回る大迂回しかない。

日本郵船・川崎汽船などの国内大手も相次いで通峡を停止している。

 

日本経済への影響――3つのステージ

① 今すでに起きていること:原油・株価の急変動

WTI原油先物価格は一時1バレル110ドルを超え、2月27日の終値(67ドル)と比べると78%もの急騰となった。

東京株式市場も大幅安となり、日経平均は2月28日以降の緊迫化を受けて、トランプ大統領が関税導入を公表した2025年4月以来最大の下落率を記録した。

 

② 封鎖が続くと起きること:ガソリン200円、光熱費直撃

ニッセイ基礎研究所の試算によれば、封鎖が2〜3カ月続いて原油価格が1バレル110ドルに達した場合、ガソリン価格は1リットル204円前後まで急上昇する可能性がある。

ガソリンだけではない。電気・ガス・灯油・プラスチック・化学製品・輸送コスト……あらゆるモノの価格が連鎖的に上がる。

三菱ケミカルグループは3月9日、ナフサ(粗製ガソリン)の調達難を理由に鹿島コンビナートのエチレン生産設備の稼働率を引き下げた。出光興産も封鎖が長期化すれば山口・千葉の設備を停止する可能性があると取引先に通知している。両設備の生産能力は国内全体の約16%にあたる。

 

③ 最悪シナリオ:スタグフレーション

三菱総合研究所は「燃料価格20%上昇による日本の交易損失は、トランプ関税による追加関税徴収額を上回る規模となる」と試算しており、封鎖が長期化した場合はインフレ再燃と生産縮小が同時に起きる「スタグフレーション」リスクが高まると警告している。

 

日本の”頼みの綱”は備蓄254日分

日本は原油備蓄が約250日分あり、世界の中でも備蓄が最も進んでいる国のひとつだ。短期で収束すればそれほど悪影響は出ないが、長期化すれば備蓄だけでは乗り切れない。 またIEA加盟32カ国は過去最大となる4億バレルの備蓄協調放出を全会一致で決定した。

 

停戦の見通しは?

残念ながら、楽観できない。イランの外交政策顧問ハラジ氏は「もはや外交の余地はない。

戦争は経済的な痛みを伴うことでのみ終結する」と述べ、長期戦を宣言している。

 

ホルムズ海峡の封鎖は、ガソリン代・電気代・食料品価格という形で家計に直撃する問題だ。

1973年のオイルショック時のようなパニックを防ぐためにも、情報を正確に把握し、冷静に対応することが求められる。

海運業界にとっては、ルート変更・保険コスト急騰・船腹不足という三重苦が重なる正念場。

この危機がいつ収束するかは、中東情勢の行方次第であり、引き続き注視が必要だ。(石崎)

※2026年3月13日現在