
はじめに――“二重の逆風”が吹き始めた
2026年2月28日、米軍とイスラエル軍がイランへの大規模攻撃を開始した。
エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡は事実上の封鎖状態となり、原油価格は急騰。国内のガソリン・軽油価格は今後さらに値上がりする見通しです。
折しも、2024年問題への対応で体力を消耗し、2026年問題(改正物流効率化法の本格施行)への備えを進めてきた最中のことである。
人件費上昇・ドライバー不足・運賃転嫁の難しさという構造的な課題の上に、今度は燃料費高騰という「急性の痛み」が重なりました。
この局面で経営者に求められるのは、パニックではなく冷静な現状把握と、すぐに動ける具体的な行動です。
現状を整理する――何がどう変わるのか
軽油価格の見通し
今年1月、暫定税率廃止によって軽油価格は1リットルあたり約25円の引き下げ恩恵を受け、一時は安値圏で推移していた。
しかしホルムズ海峡の封鎖が長期化した場合、悲観シナリオでは原油価格が1バレル140ドルに達するとの試算もあり、軽油価格も暫定税率廃止の効果を帳消しにして高騰する可能性が高い。
電気・ガス代への波及
冷凍・冷蔵倉庫を持つ事業者にとっては、電気代の上昇も見逃せなです。原油高は電力・ガスコストにも半年から1年のタイムラグをもって波及してくるでしょう。
「軽油+10円で会社はいくら消える?原価計算」
“いくら痛いか”を1分で見える化(運賃交渉の芯)
燃料が上がった分だけ、1kmあたりコストが増えます。
- 増加額(円/km)= 軽油上昇幅(円/L)÷ 燃費(km/L)
- 例:軽油が +10円/L
- 燃費 3.5 km/L(大型寄り) → 10 ÷ 3.5 = 約2.9円/km
- 200km走ると 2.9×200=約580円/台(片道でこの増加)
- 1日10台動けば 約5,800円/日、月20日で 約116,000円/月
この“算数”を先に出すと、交渉が「気分」ではなく「根拠」になります(公的ガイドラインも、客観データ提示と原価計算の重要性を明記)。
上記を踏まえて事業者が今すぐ取り組むべき3つのこと
①いちばん効く対策:燃料サーチャージ(別建て)を導入
燃料サーチャージは、燃料の上げ下げを運賃と切り分けて調整する仕組みです。
急騰時の赤字化を止めるための“安全弁”になります。
荷主側に刺さる説明
・「運賃値上げ」ではなく
“燃料の変動分だけを、透明に別建てで調整する制度”
・下がったら下げる(双方向)にして、納得感を担保
ポイント:“距離・燃費・使用量”のどれで握るかを先に決めると揉めません。
国交省は「標準的運賃」の見直しで、燃料高騰分や高速料金なども含めて適正転嫁できるようにする方向性を明示しています。
なので、見積・請求は最初から分けるのが強いです。
見積の行(例)
- 基本運賃(距離/時間/車建)
- 燃料価格変動調整額(軽油)
- 有料道路料金(実費)
- 待機時間料 / 荷役料(該当時)
などなど
② 燃費改善と運行の最適化
コスト削減の即効策として、日常の運行管理を見直すことが重要だ。
・アイドリングストップの徹底:荷待ち時間・休憩時間中のエンジン停止を習慣化する
・ 適正速度の管理:高速道路での速度は燃費に直結する。80〜90km/hの定速走行を意識させる
・ AIルート最適化ツールの活用:配送ルートの見直しによって燃料コスト削減と走行距離短縮が同時に実現できる
車両1台あたり月間数千円の節約でも、保有台数が多ければ大きな差になる。
③ 荷主との関係強化とコスト透明化
今回の燃料高騰は「外部要因」だ。荷主も事情は理解している。黙って赤字を抱え込む必要はない。
大切なのは、感情論ではなく数字で話すことだ。「燃料費が○%上がった結果、1運行あたり○円のコスト増になっている」という形で示せば、荷主も検討せざるを得ないです。
コスト明細を丁寧に開示し、長期的なパートナーシップのなかで適正運賃を確立していくことが、今後の事業継続の基盤になるでしょう。
中長期で考えるべき視点
EV・LPGトラックへのシフト検討
燃料価格のボラティリティ(変動性)が高まるなかで、電気自動車(EV)トラックや LPGトラックへの移行は、中長期のリスクヘッジになり得る。補助金情報を定期的にチェックし、車両更新のタイミングを逃さないようにしましょう。
共同配送・幹線輸送の見直し
単独では採算が厳しい路線について、同業者との共同配送や、鉄道・船舶へのモーダルシフトを検討することも選択肢です。
燃料費の高い時代ほど、積載効率と輸送距離の最適化が利益を左右します。
おわりに
ガソリン高騰は一時的な価格の上下ではなく、中東情勢・エネルギー政策・脱炭素の流れが複雑に絡み合った構造問題でもある。今回のイラン情勢が落ち着いたとしても、次のリスクはすでに内包されています。
大切なのは、「嵐が過ぎるのを待つ」のではなく、変動に強い経営体質を今のうちに作っておくことです。
燃料サーチャージの整備、荷主との対話、運行効率の改善――どれも今日から始められる。
この厳しい局面を、業界全体の体質改善へのターニングポイントにしてほしいです。
本コラムは2026年3月時点の情勢をもとに作成しています。原油価格・ガソリン価格は今後の中東情勢により大きく変動する可能性があります。(石﨑)
お気軽にご相談ください
一般貨物自動車運送業に関して、ご不明なことやご相談がありましたら、
お電話または下記のお問合せフォームよりお気軽にお問合せください。

お電話での問合せ・相談
まずは「貨物運送業の件で」とお電話ください。
06-6152-9688
<受付時間 10時~18時>
※業務の都合上、電話に出られない場合があります。留守番電話対応の場合は、お名前とご連絡先等のメッセージをお残しください。
のちほど当方よりご連絡差し上げます。
メールでの問合せ・相談
365日・24時間、いつでも受付中です。
