「日本の石油備蓄は90日分。封鎖3カ月で底をつく」

原油高騰・運賃急騰・軽油不足ホルムズ海峡危機が物流現場に及ぼす「これだけのこと」

 

ホルムズ海峡封鎖から1カ月──日本の物流・エネルギーは今どうなっているか

2026年2月28日、米国・イスラエルがイラン軍事施設への攻撃を開始した。

翌日、イラン革命防衛隊(IRGC)はホルムズ海峡の事実上の封鎖を宣言。

世界の原油海上貿易量の約25%、アジア向け原油・LNGの80%超が通過するこのエネルギー動脈が、機能停止状態に入って4週間が経過した。

海峡を通過する船舶数は、平時の1日約120隻から、わずか5隻程度にまで激減した。

 

① 軍事・外交情勢──交渉は始まったが、着地点は見えない

トランプ大統領は3月21日、「48時間以内にホルムズ海峡を完全開放しなければ、イランの発電インフラを撃破する」と最後通告を発した。

しかし3月23日には一転して「建設的な対話が進んでいる」と発言し、期限を事実上延期した。

3月24日には、米国がパキスタンを仲介者として、核開発停止・海峡開放を含む15項目の和平案をイランに送付したことが報じられた。

制裁全面解除と民生原子力支援を条件に、1カ月間の停戦で交渉する構想とされる。

しかしイランの新最高指導者モジュタバ・ハメネイ師は「封鎖継続に必要な手段は引き続き使用されなければならない」と表明しており、国家意志としての封鎖継続が鮮明になっている。

またイランはイランのシャドーフリートには通過を認めており、実質的な封鎖は中立国以外を対象にした選択的措置であることが明らかになっている。

 

② 原油価格はどこまで上がるか

原油価格は危機前(2月28日)のブレント60ドル台後半から、3月16日には一時105ドルに到達した。

フィッチ・レーティングスは、封鎖が6カ月続けば2026年平均で120ドル、急騰時には130〜170ドルに達すると試算している。

さらに深刻なのはLNGだ。世界LNG供給量の約20%を担うカタール・ラスラファン施設がフォースマジョールを宣言しており、LNGスポット価格は1セッションで39%急騰した。

原油と異なりLNGには代替パイプラインが存在せず、供給途絶は構造的に解決手段がない。

 

③ 日本の物流・輸送現場への直撃

日本が輸入する原油の約94%は中東産であり、そのほぼすべてがホルムズ海峡を通る。

日本郵船・商船三井・川崎汽船の邦船3社は通航を停止しており、日本船主協会によればペルシャ湾内に日本関係船舶44隻が残留している。

国土交通省の金子大臣は3月17日の会見で、トラック・バス事業者から「従前通りの軽油調達が難しくなっている」との声が上がっていることを認め、実態把握を進めていると述べた。

海上戦争保険の料率は従来比12倍となる3%まで急騰しており、代替ルートである喜望峰経由への変更で輸送コストと日数が大幅に増加している。

ペルシャ湾内に閉じ込められたコンテナ船は132〜138隻・約47万TEUにのぼり、世界コンテナ船の約1.4%が機能停止状態にある。

 

④ 行政書士の視点から──今、事業者が考えるべきこと

海運・物流事業者にとって、今回の危機が突きつけた問いは一つだ。「平時の契約・保険・法務体制は、有事に機能するか」ということである。

具体的には以下の点を確認しておく必要がある。

運送契約の不可抗力(フォースマジョール)条項の内容と適用範囲。

イランが一部船舶に対し1隻あたり最大200万ドル(約3億円)の非公式通航料を請求しており、法制化の動きもある。

こうした事態が想定外であれば、契約条項の見直しが急務となる。

戦争危険保険の付保状況。ハパックロイドは戦争危険付加運賃として1TEUあたり1,500ドル、リーファーでは3,500ドルを導入しており、

この負担が荷主との運賃交渉にどう影響するかを整理しておく必要がある。

代替ルートへの切り替え対応。喜望峰経由は航行距離が約3倍・コストが約4倍となり、納期・在庫計画の全面見直しを要する。

 

⑤ 今後のシナリオ

分析家の間では「米国が中東に集中できるのは1〜2カ月が限界」とも言われており、原油価格の国内影響が大きくなれば、トランプ氏が方針転換する可能性も指摘されている。

マレーシア沖などにイラン産原油の海上在庫が約1億5,400万バレル滞留しており、これは日本の消費量の45日分に相当する。

米国が制裁を一時解除した場合、日量約510万バレルが世界市場に追加供給される計算になるとの試算もある。

停戦交渉が進むか、軍事的エスカレーションが続くか。どちらのシナリオでも、

ネルギー依存度の高い日本の輸送・海運事業者は、「危機対応の準備があるか否か」で事業継続力に大きな差がつく局面を迎えている。(石﨑)