
今、株式市場で「造船」が熱い。
きっかけは一つではない。重なり合う複数の追い風が、長年「冬の時代」を耐えてきた日本の造船業界を一気に押し上げている。
株価高騰の背景——三つの柱
第一に、需要の爆発的拡大だ。
国際的な環境規制を背景とした新造船需要は中長期的な拡大が見込まれており、業界の受注トレンドは依然として力強い。
日本造船工業会の予測では、2030年代初頭には世界の建造量が年間1億総トンを超え、その後も高水準での推移が続く「高原状態」が続くと見られている。
第二に、国策の本格始動だ。
高市政権は「造船」を重点投資対象17分野に加えており、財政支援による造船産業のさらなる活性化が期待されている。
自民党が2025年6月に発表した「我が国造船業再生のための緊急提言」では、経済安全保障推進法に基づき「船体」を特定重要物資に指定し、国主導で1兆円以上の投資を可能とする基金創設が盛り込まれた。
第三に、日米連携の新展開だ。
日米関税交渉において、半導体・AI・重要鉱物と並び、造船分野でも米国内に強靭なサプライチェーンを構築すべく両国が連携する方針が示された。
トランプ政権が米国内の海事産業再生を国策として掲げたことで、日本の造船技術への期待はさらに高まっている。
業界の現在地——復権への道
かつて世界シェア50%を誇った日本の造船業界は、中国・韓国に押される形で現在は世界3位(シェア約20%)に後退した。
しかし、今その巻き返しが本格化している。
今治造船など国内17社で構成する業界団体は、2035年までの建造量倍増を目標に掲げ、総額3,500億円規模の設備投資を行う方針を表明。
政府も税制支援や基金創設などで強力にバックアップしている。
脱炭素化への対応も重要なドライバーだ。温室効果ガス排出量ゼロ目標を背景に
既存のディーゼル船を次世代エンジン搭載船へ切り替える新造船需要が継続的に発生しており、今後も建造需要は高い水準を維持するとの見通しがある。
海事代理士の視点から
造船業の復権は、単に株価の話ではない。船が増えれば、船舶の登録・抹消、船員手帳の申請、各種検査の代行——海事代理士の仕事も自然と増える。
造船所の設備投資が加速すれば、港湾区域内の工事許可や埋立関連の許認可業務にも動きが出る。
業界全体が上昇気流に乗るとき、許認可の専門家として最前線に立てる立場を活かしたい。
造船株の高騰は、私たち海事法務の実務家にとっても、新たな仕事の波の予兆である。(石﨑)
