
物流の話をするとき、つい「運賃が上がった」「車が足りない」「納品がきつい」と“目の前の火”に意識が向きます。もちろんそれは現場の本音です。
でも今、もっと根っこのところで、物流の土台そのものが変わり始めています。
国の資料では、対策をしない場合、2024年度に14%、2030年度に34%の輸送力が不足するという見立てが示されています。
つまり「人手不足が大変」ではなく、物理的に運べない日が増えるかもしれない。
ここまで来ると、モーダルシフトは“理想論”ではなく、会社の継続性を守るための現実的な保険になります。
そもそもモーダルシフトって何?
モーダルシフトは一言でいえば、長距離の幹線輸送をトラック以外(鉄道・船など)に振り分けることです。
ポイントは「全部を置き換える」ではなく、一番負担が重い“長距離部分”を切り出すこと。
たとえば、
- 工場 → 港(または駅)まではトラック
- 港(または駅) → 港(または駅)までは船・鉄道
- 港(または駅) → 納品先はトラック
この形にするだけで、トラックの“拘束時間”が短くなり、ドライバー不足の影響を受けにくくなります。
なぜ今、急にモーダルシフトなのか理由は3つあります。
1.「運べない未来」への対策
さきほどの2030年34%不足の話は、脅し文句ではありません。
国交省は、この不足をより確かな形で埋めるために、従来の鉄道・内航海運に加えて、陸海空の多様なモードも活用する『新モーダルシフト』の考え方を整理しています。
2.CO2の差が“見える数字”で大きい
国土交通省の公表値では、1トンの貨物を1km運ぶCO2は
- トラック(営業用貨物車):207g
- 船舶:42g(約1/5)
- 鉄道:19g(約1/11)とされています。
脱炭素は「いいこと」だけでなく、取引先からの要求や評価にも直結します。
だから“輸送手段の選択”が、営業や調達の話になってきたわけです。
3.「待つ・積む・降ろす」のムダを減らす流れ
物流は走っている時間より、実は待ち時間・荷役で詰まりがちです。
国や関係機関も、荷主の意識改革や、荷待ち・荷役の時間短縮などを強く打ち出しています。
モーダルシフトは、こうした“現場のムダ”を見直す入口にもなります。
海運(内航)がモーダルシフトで“強い”理由
内航海運は、国内貨物輸送の大きな柱であり、物流2024年問題の文脈でも期待が高いと整理されています。
そして最近は「船を使いたいけど、使い方がわからない」という声に応える形で、国土交通省が
- 「内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド」
https://www.mlit.go.jp/maritime/content/001891014.pdf
- 航路情報一覧(フェリー/RORO/内航コンテナ等)
https://www.mlit.go.jp/maritime/bosai_shipslink.html
を公表して、導入手順を見える化しています(令和7年5月公表)。
特に、フェリーやRORO、内航コンテナは「積み方・運び方」が型になりやすいので、条件が合えば再現性が出ます。
海運事業者向け:モーダルシフトを取りに行く「5つの商品化」
ここからは提案です。内航を“選ばれるサービス”にするための、実務的な組み立てです。
1.まず「3つの船種」を“用途別メニュー”にする
国交省のガイドは、フェリー/RORO/内航コンテナの3船種について、特徴・手順・メリットを整理しています。
海運側がやるべきは、これをそのまま渡すことではなく、自社の航路・運用に合わせて“用途別”に翻訳することです。
- フェリー:ドライバー同乗/無人航送の選択肢、休息との相性
- RORO:車両・シャーシ運用、積卸の速さ、定期性
- 内航コンテナ:ユニット化、拠点間輸送、在庫設計との相性
荷主は「ROROが何か」を知りたいのではなく、
「自社の貨物は、どれに当てはめれば安全か」を知りたい。ここを先回りします。
2.“前後の陸送込み”を基本形にする(または設計図を渡す)
モーダルシフトは、真ん中を船にしても、前後が崩れたら終わりです。
港の手配、カット時間、待機、荷役、予約、緊急時の連絡網――この「つなぎ目」を荷主に丸投げすると、止まります。
自社で陸送まで抱える必要はありません。
ただし最低限、荷主が動けるように
- 推奨ドレージパターン(距離帯、時間帯、待機の出やすい箇所)
- 港での受け渡し導線(受付、必要書類、締切、積付条件)
- トラブル時のエスカレーション(誰に何時までに連絡、代替案)
この“設計図”を用意しておく。これだけで成約率は変わります。
3.「トライアル輸送」を商品として用意する
国土交通省の『内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド』でも、検討開始から利用までの流れ(要件整理→航路確認→船社へ問い合わせ→すり合わせ→契約→トライアル)を示しています。
ここで海運側が一番やるべきは、トライアルを「特別対応」にしないことです。
- 最小ロット
- 期間
- 料金の考え方
- 必要な荷姿条件
- KPI(破損・遅延・待機時間・現場負荷)
をテンプレ化して、**“試せる商品”**にする。荷主の心理的ハードルが一段下がります。
モーダルシフトの勝者は、「船を持つ会社」ではなく「運び方を設計できる会社」
モーダルシフトは、海運にとって追い風です。
でも、追い風は、帆を張った人にしか届きません。
荷主が求めているのは、「船に乗せれば終わり」ではなく、
**“現場が回る運び方”**です。
船種の使い分けを用途別に翻訳し、前後接続を設計し、トライアルを商品化し、社内説明セットまで整える。
この「ひと手間」を惜しまない海運事業者が、次の時代の定期荷を取っていく――私はそう見ています。(石﨑)
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