
行政書士の歴史――知られざる「書く人」の数奇な旅路
起源は代書屋。読み書きできない人のために書いてあげる人
明治維新で近代国家が動き出すと、お上への届け出・申請書類が爆増しました。
しかし庶民は字が書けません。
そこに登場したのが「代書人」です。
筆一本を武器に、読み書きのできない人々の言葉を書類に変えて生きた職人たちでした。
資格もなければ規制もなく、ただ「書ける」という一点だけで世の中に必要とされた、なんとも骨太な稼業です。
法律に縛られる日がやってくる
そんな野放図な代書人の世界にも、やがて秩序が求められる時代がやってきました。
1920年(大正9年)、「司法代書人法」が制定されます。
もっともこれは現在の司法書士の話で、行政書類を専門に扱う代書人たちはまだ「ノー資格・ノー規制」の自由業のままでした。
彼らの公認への道は、もう少し先まで待たなければなりません。
ようやく国家に認められた日
戦争が終わり、GHQの占領下で日本が新しい国のかたちを模索していた1951年(昭和26年)、ついに「行政書士法」が制定されました。
明治から数えれば半世紀以上、代書人たちが地道に積み上げてきた仕事がようやく国家公認の職業として認められた瞬間です。
司法書士の誕生より30年以上遅い、少々遅咲きのデビューでした。
高度成長の波に乗って
その後、日本経済は驚くべき速さで成長していきます。
企業が生まれ、工場が建ち、街に飲食店が増えていくたびに、許認可申請の書類もうなぎ上りに増えていきました
建設業許可、飲食店営業許可、運送業許可——役所に提出しなければならない書類の山を、事業者に代わって整えていく。
「書く」だけだった仕事が、「許認可のプロ」としての地位を確立していったのは、まさにこの時代のことです。
そして現在へ
今や行政書士の取り扱い業務は1万種類以上と言われています。外国人ビザ、会社設立、農地転用、風俗営業、そして都市型ハイヤー許可まで。
筆一本の代書屋から出発した職業は、いつしか事業者の「行政手続きの参謀」へと姿を変えました。
字が書けない人を助けるために生まれた職業が、いまや法律と行政の複雑な迷宮を依頼人の代わりに歩く案内人になっています。
起源は地味でも、その旅路はなかなか読み応えのあるものです。(石﨑)
