この夏、エアコンをつけるたびに「戦争代」が上乗せされる──電気代・ガス代、2026年夏に何が起きるか

 

「補助が切れた夏」+「中東戦争」+「猛暑」が重なる──2026年の電気代が最悪な理由

 

この夏のエアコン代は「戦争代」込みになる

2026年2月末、米国・イスラエルとイランの間で軍事衝突が起きた。中東の話、遠い国の出来事。

そう思っていた人も、今年の夏には電気代の請求書という形で、その影響が確実に届いてくる。

なぜか。理由を一言で言えば、日本の電気・ガスの相当部分は「中東の原油・LNGを燃やして」作っているからだ。

 

① そもそもホルムズ海峡って何?

イランとオマーンの間にある細長い海の通り道。世界で消費される石油の約2〜3割、日本の原油輸入の約9割が通過する「エネルギーの大動脈」だ。

この海峡が2月末から事実上封鎖されており、通過する船の数は1日120隻から、わずか5隻に激減している。

 

② 電気代への影響はいつ届く?

重要なのは「時間差」だ。燃料費調整額は、燃料価格の変動を約3カ月後に電気料金へ反映する仕組みになっている。

3月の燃料価格の変動は6月の電気料金に、4月分は7月に反映される。

つまり今まさに中東で起きていることが、夏のエアコンシーズン真っ只中の請求書に乗ってくる。

2026年5月検針(4月使用分)では、政府の補助金終了と再生可能エネルギー賦課金の値上げが重なり、東京電力の標準的な契約で前月比457円の値上がりが起きている。

これはまだ、ホルムズ封鎖の影響が本格的に反映される前の数字だ。

 

③ ガス代も夏に向けて上がっていく

都市ガスの料金は、LNG(液化天然ガス)の3カ月平均価格をもとに、その3カ月後の検針分に反映される。

3月のショックはちょうど夏の請求書に届く構造だ。

すでに動きは出ている。東京ガスは2026年4月検針分について、東京地区で前月比+13.87円/m³、標準家庭(30m³)で月額+416円の上昇を公表している。

しかもこの4月分にはまだ政府補助の6円/m³が残っている。補助が消えた後は、さらに上がる。

 

④ ガソリンも「補助頼み」の状態

政府は3月19日から緊急補助を再開し、全国平均170円程度に抑える方針を打ち出した。しかし補助の財源(約2,800億円)が尽きれば抑制が難しくなる。

補助がなければ、専門家の試算では200円を超える可能性もある。

「補助があるから大丈夫」ではなく、「補助があるからこの価格で済んでいる」という状況だと理解しておく必要がある。

 

⑤ 三重苦が重なる「最悪のタイミング」

今年の夏が特に厳しいのは、以下の三つが同時に来るからだ。

・燃料高騰(ホルムズ封鎖による原油・LNG価格の上昇)

・補助金の縮小・終了(政府補助は毎回「時限措置」で繰り返し終了してきた)

・猛暑(気象庁は2026年夏の気温を「全国的に平年より高い」と予測)

この3つが重なると、郊外でエアコンと車を使う家庭では、前年比で生活コストが4〜8%近く押し上げられる実感になる可能性がある。

 

⑥ いつまで続く? 見通しは?

分析家の間では「米国が中東に軍事力を集中できるのは1〜2カ月が限界」とも言われており、原油価格の高騰が米国の内政に響くようになれば、トランプ大統領が方針を転換する可能性もある。

ただし、外交交渉が合意に至っても、燃料価格が即座に下がるわけではなく、電気・ガス代への「反映」にはさらに数カ月かかる。今夏の家計が改善されるとすれば、それは秋以降の話になる。

 

⑦ 今できること

値上がりを止めることは個人にはできない。だが、準備はできる。

・7月・8月の電気代を「昨年より高い前提」で家計に織り込んでおく

・エアコンのフィルター清掃(詰まりがあると消費電力が増える)

・設定温度を1℃上げるだけで約10%の節電効果があるとされる

・政府が補助を再開した場合は自動的に値引きに反映される(申請不要)

電気・ガス代の値上がりへの即効性はないが、今の段階で手を打つことに意味がある。3〜4カ月後には中東の影響が確実に家計に届く。

動いた家庭と動かなかった家庭では、数年後に差が出る。

「遠い海峡の戦争」は、今年の夏、あなたの電気代の中にいる。(石﨑)